はたらく人のがん検診ガイド

職域におけるがん検診
に関するマニュアル

健保・会社の健康診断ご担当者様へ

健保組合の方に是非見ていただきい内容です

検査は特定のがんを発見するために行う

  • 会社の定期健康診断にて、福利厚生で追加されたがん検診があるので、腫瘍マーカーを受けてみたら、陽性と診断された。
  • 精密検査が必要となったが、場所が特定できずに全身の検査をすることになった。
  • 若い世代からがん検診=社員への健康サービス?
  • 血液検査や尿検査など、多くの疾患がわかる網羅的な検診がいい?

こういった考えは医学的に間違っています。例えば、子宮頸がん検診以外では40歳未満のがん検診は奨励されていません。検査は特定のがんを発見するために行う。これが重要です!

がん検診は特定の治療すべきがんを早期に見つけるために行いましょう

何も病気がない人がたくさんの検査を受けることになり、大変な思いをすることになります。例えば腫瘍マーカー検査が陽性だった場合にCTやMRI、胃カメラ、大腸カメラなど全身の臓器を順番に検査する必要があり時間もお金もかかります。仕事を何回も休んで、全身を調べても何も見つからないことはよくあります。これを偽陽性と言います。腫瘍マーカーは、がんを見逃すことも多くあります。せっかく受けたがん検診が社員の負担になってしまうことになります。がん検診は特定の治療すべきがんを早期に見つけるために行いましょう。

がん検診のデメリット

検診のデメリットは「偽陽性」「過剰診断」「見逃し」「偶発症」です。

偽陽性

職場の検診では、要精密検査と判定され、精密検査したのに異常が見つからない。これが偽陽性です。偽陽性が多いと、色々な負担が!不安な気持ちにさせたり、会社を休むことで色々な負担が強いられます。検査によっては、まれに偶発症として医療事故が起こる場合もあります。

過剰診断

色々な検査をすると、治療が不要なものを見つけることがあります。不要なものとは放置していいか、治療すべきか、どんな治療がベストか、が確定してない病変のこと。これらは「がん」と診断されても、進行が遅く、寿命には影響しない、あえて治療する必要がないもののことです。しかし、がんと診断された本人は、心配になり治療を受けることになります。これを剰過診断と呼びます。

見逃し

がんがあるのに、検査で陰性になる場合のことをいいます。

偶発症

偶発症とは、バリウムが間違って気管に入ってしまったり、内視鏡で出血が起こったりする、検査による事故のことです。

がん検診のメリット

まず、がんで寿命が短くなることを防ぎます。早期に発見できれば、体に優しい治療の選択が可能になり、社会復帰が早くできます。早期発見し治療することで仕事への復帰が早くでき、QOLが保てるということです。

がん検診を実施する場合の注意点

健保組合が保健事業としてがん検診を企画する場合「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を参照しましょう。なぜなら、これらの検査は、がんで寿命が短くなるのを防ぐことや、利益が不利益に勝ることが実証されているからです。結果とし て、QOLの確保、早期社会復帰、医療費の削減も期待できます。マニュアルにない検査の希望者には情報提供を行いましょう。検査のよい面ばかりではなく、よくないことが起こりえることも伝えましょう。

事業評価を行いましょう

がん検診を実施する場合には、事業評価を行ってください。事業評価をすることにより利益が不利益を上回る検診を整備することができます。がん検診は、がんで寿命を縮めないことを第一の目的とされますが、職域で実施する場合には、早期復職、QOLの確保や早期の生産性の回復、医療費削減を期待して実施されます。がん検診を有効に実施するには、事業評価が重要です。

事業評価のためのプロセス指標

事業評価のためにモニタリングする項目、これらをプロセス指標と呼びます。受診率、要精検率、精検受診率、がん発見率、を注視します。精検とは精密検査のことを言います。

精度管理について

がん検診が効果的に機能しているかについて事業評価することを精度管理と言います。事業評価するとき用いる指標をプロセス指標と言います。プロセス指標については受診率は高いこと、要精検率は一定の基準値に近いこと精検受診率は、100%に近いこと、がん発見率は、一定の基準値に近いことが、それぞれのぞましいとされています。データヘルス計画では、精検受診率の向上が求められていますので、ここまで目指しましょう。

参考となる基準値

要精検率やがん発見率の基準値として参考値です。詳しくは「がん検診事業のあり方」をご覧ください。

一番重要なのは精検受診率の向上

検診で要精検の判定の場合には、必ず精検の受診が必要です。多くの方が放置してしまう傾向があります。

精検受診率向上のために精検受診勧奨の仕組み作りを

精検受診率向上のためには、がん検診受診前に、がん検診で要精検と判定の場合は必ず精検を受診すること、と受診者に情報提供しましょう。要精検者の把握のために、受診者に事前の結果データ利用に関わる同意をとる。検診結果の把握と精検受診勧奨の仕組みを作りましょう!精検受診勧奨するにはリストを作ると便利です。データヘルス計画でも精検受診率の向上が求められています。がん検診の結果について、誰が結果を確認しているか受診者は不安になります。そのため、がん検診の申込時にこのように同意を取っておくことが必要です。

まとめ

がん検診を企画する場合は「職域におけるがん検診に関するマニュアル」に基づいた検診を実施し、事業評価を行いましょう。精密検査受診率の把握と、受診勧奨の仕組みを作りましょう。 がん検診を行うことの意義をあらためて確認し、有効活用していきましょう。

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