はたらく人のがん検診ガイド

職域におけるがん検診
に関するマニュアル

会社が精検受診勧奨を行う場合の方法と注意点

ここでは、会社が精検受診勧奨を行う場合の留意点について説明します。特に職場で社員のがん検診の判定結果を取り扱う場合には、労使それぞれに不安が生じやすいので、注意が必要です。

検診結果を扱うのはだれか?

がん検診の判定結果は「健保組合と共同利用する場合」と「検診機関から直接受け取る場合」があります。

社員の情報の取り扱いについて

がん検診の結果は要配慮個人情報であるだけでなく、労使それぞれに不安が生じやすいので、適切な取扱いが求められます。がん検診の判定結果を入手する場合には、「労働安全衛生法」と「個人情報保護法」の両方を考える必要があります。基本的にはこちらの手引きを参照し、健康情報等取り扱い規定を事業所毎に策定します。

リンク:事業場における労働者の健康情報等の取扱規定を策定するための手引き(厚生労働省)

がん検診の結果は法定外項目に該当し、手引きには「入手には同意が必要であること、現場の状況に応じて適正な取り扱いを定めておくこと」とのみ記述されています。

事業場における労働者の健康情報等の取扱規定を策定するための手引き

がん検診結果について、情報を取り扱う場合

具体的内容
収集 検診機関からがん検診結果を収集する
保管 健康管理部門内で施錠にて保管、あるいは外部からアクセス遮断した電子フォルダーあるいは電子媒体にて保管する
使用 精検受診勧奨、プロセス指標による精度管理(要精検率、要精検受診率の把握)、精密検査結果に基づくアドヴァイス
加工 精検の必要の有無による2値化(要精検、精検不要)、精密検査結果のカテゴリー化
消去 5年間保存して紙の場合物理的、電子媒体の場合は再現できないように廃棄する

具体的な取扱規程

健康情報取扱規程に追加する内容.pdf

明確にしておくポイント

会社が精検受診勧奨を行う場合は、これらを明確にします。

  • ① がん検診結果情報を取得する目的は明確か? (目的は、要精密検査と判定された社員に医療機関の受診勧奨を行うためです)
  • ② 誰ががん検診結果にアクセスできるのか?
  • ③ 情報を扱う人は取り扱いのルールについて教育されているのか?
  • ④ がん検診結果をどのように扱うのか?
チェック

がん検診結果の入手に関する社員からの同意について

がん検診結果の入手に関して社員の同意を得る方法として、「毎回の検診毎に個別に同意を得る方法」と「健康情報等取扱い規定に明示して同意を得る方法」がありますが、衛生委員会や労使との協議を通じて、その事業所にとってベストな方法を見つけることが大切です。健康情報等取扱い規定に明示して同意を得ておけば、毎回の検診で同意を得ることは不要です。ただし、その場合は就業規則等への記載だけではなく、この取扱規程については全社員への十分な説明と個別の同意が必要です。

ポイント

同意とは、対象者に十分に説明した上で、その後に同意した意思を確認できることを指します。
同意を得た後は、その内容を記録として保管しておきましょう。

同意

具体的な進め方

STEP1 精密検査の受診勧奨について協議

会社で精密検査の受診勧奨をする必要性について、衛生委員会や労使間で協議します。

STEP2 検診結果を入手するときに同意を得る方法を検討

次に、同意を得る方法について、その事業所に合った方法を検討します。

STEP3 社員への周知

全社員へ周知する方法を検討して実施しましょう。 がん検診の結果の入手目的は、精密検査が必要な方に受診を促すためにのみ使用する、と周知し、社員の不安を取り除きましょう。

STEP4 情報の取扱いルールの徹底

情報を扱うのは、医療職がいる場合は医療職に限定し、いない場合は衛生管理者または衛生推進者に限ります。そして、情報の取扱いルールの指導を徹底します。

STEP5 精密検査の受診勧奨の実施

社員の同意を得て、情報の取扱いに注意して精密検査の受診勧奨を実施しましょう。

がん検診申込時の「精査検査受診勧奨に関する」同意に関する雛形

同意

精密検査受診勧奨の同意を得ることには、以下の2点が含まれます。

1)「法定外検査項目」の結果を入手すること
2)精密検査の受診を勧奨すること

結果を入手する場合には、前提として、入社時などに定める健康情報等の取扱規定において、がん検診結果などの法定外項目の情報を入手する目的と、取り扱いの範囲(誰までが情報を扱えるか)が規定されていることが重要です。こうした規定がない場合には、毎回、結果を入手する際に個別の同意が必要となります。

その上で、がん検診の精密検査受診勧奨事業に参加するかどうかについての同意取得には、がん検診申込時に以下のいずれかの方法が考えられます。

① オプトイン方式:同意する人に申し出てもらう方法
② オプトアウト方式:同意しない人に申し出てもらう方法

オプトアウト方式のほうがハードルは低いですが、より厳格に同意を得るにはオプトイン方式のほうが望ましいと言えます。

現時点では、同意を得る方法について「労使が十分に協議し、その事業所に合う方法で適切に行うこと」が求められています。そのため、適切な手続きをしっかり踏んで、同意を得る方法について、社員へ通知することが必要です。

いずれにしても、同意の有無に関してはプライバシーを保護する必要がありますので、取り扱いには十分ご注意ください。

オプトイン形式

労使での協議、衛生委員会の審議において一番厳格な方法が望ましいと考えた場合、又は健康情報等規程の中に、がん検診の結果の入手に関する規定がない場合、あるいは、業者に依頼して精密検査受診勧奨を依頼する場合にはオプトアウトは不可となります。

がん検診の結果にて、要精密検査の判定の方は必ず精密検査の受診をお願いします。

尚、会社では精密検査受診を促進(リマインド)するのみに利用することを目的とし、検診機関からの結果を入手して個別の精密検査受診勧奨を実施しております。

検診結果については、医療職である産業保健スタッフ(医療職がいない場合は衛生管理者、推進者)のみが厳重に取り扱い、個別に精密検査受診に関する案内(精検受診勧奨)を行っております。(他の会社関係者には情報は共有されません)

個別の精検受診勧奨に同意される方は以下にチェックしてください

  • 同意します
  • 同意しません

本件に関するお問い合わせ先はこちらです。〇〇〇

(不要の申し出をされた方については、結果については取り扱いません)

同意については、紙、電子媒体でよいかどうかを含め、事業所の実情に合わせて労使で協議して決めます。

オプトアウト形式(健康情報等取扱規程で法定外項目の入手の同意が得られている場合)

健康情報等取扱規程において、がん検診結果等の取扱が規程されていて、この規程に既に同意が得られている場合には、労使や、衛生委員会の審議で、受診勧奨に関してはオプトアウトでの同意形式でも問題がないと労使が判断した場合

がん検診の結果にて、要精密検査の判定の方は必ず精密検査の受診をお願いします。

尚、会社では精密検査受診を促進(リマインド)するのみに利用することを目的とし、検診機関からの結果を入手し、個別の精密検査受診勧奨を実施しております。

検診結果については、医療職である産業保健スタッフ(医療職がいない場合は衛生管理者、推進者)のみが厳重に取り扱い、個別に精密検査受診に関する案内(精検受診勧奨)を行います。(他の会社関係者には情報は共有されません)

個別の精密検査受診勧奨が不要な方につきましては、下記まで申し出をお願いいたします。

連絡先:〇〇〇〇〇

本件に関するお問い合わせ先はこちらです。〇〇〇

(不要の申し出をされた方については、結果については取り扱いません)

同意書の雛形ダウンロード

まとめ

  • がん検診結果などの法定外項目を取り扱う場合には、健康情報等取扱規程を事業所毎に作成しておく必要があります。
  • その上で、精検受診勧奨を行うかどうかを労使で協議して必要と認める場合には、がん検診受診の申込時に受診勧奨事業に申し込むかどうかの同意を得るとよいでしょう。

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