はたらく人のがん検診ガイド

職域におけるがん検診
に関するマニュアル

【動画解説】がん検診 精度管理できていますか?

事業評価の仕方について

がん検診を福利厚生として受診機会を与えるということに留まらず、がん検診を保健事業として考え、適正に行われているかを評価することを精度管理といいます。この動画では、精度管理についてポイントを解説します。

がん検診の精度管理とは

がん検診は、実施するだけではなく「がんが期待通り発見されているか?」「偽陽性などの不利益が多くなっていないか」などを評価することが大切です。精度管理とは、検査の精度のことを思われがちですが、本来の意味はがん検診が適切に行われているかどうかを検証しながら不備な点を改善していくことです。がん検診の精度管理では、「チェックリスト」とともに、「プロセス指標」を用いてモニタリング・フィードバック・改善することで、不利益を最小化し利益を最大化します。

がん検診の流れ

がん検診は、マニュアルにおいて推奨される年齢、検診間隔に基づいて対象者を決定します。毎年実施すべき検診と、2年に1回の検診があります。乳がん、子宮頸がん等の2年に1回の検診を毎年提供するのは推奨できません。
まず、がん検診を行って精密検査が必要な人を絞り込みます。そして、より詳しい精密検査をすることで、治療が必要ながん、あるいは前がん病変を発見するのが一連の流れとなっています。

有効に機能しているか?を評価する=精度管理

この一連の流れ全体が有効に機能しているのかを評価することを精度管理といい、「プロセス指標」とよばれる値で評価します。

がん検診では、
1 がん検診を受診する
2 精密検査が必要な人を絞り込む
3 精密検査を受診する
4 がん(前がん病変を含む)を発見する

この一連の段階における それぞれの割合を算出して、評価します。そのため、それぞれの人数を把握する必要があります。

プロセス指標について

受診率とは

受診率とは、がん検診受診対象となっている人の中で、実際に受診した人の割合で表されます。受診率は高いことが望ましく、もし低い場合には、受診の機会が十分に確保されているか、また受診の利便性が適切であるか等を確認する必要があり、受診勧奨を含め受診率を高める工夫を行うことが大切です。また、子宮頸がんや乳がん検診のように2年に1回が推奨される検診では、前年度受診者を受診率に計上しないなど、真の受診状況を把握することから精度管理が始まります。

要精検率とは

要精検率とは、「受診者」の中で「精密検査が必要」と判定された人の割合です。この値については、検診方法や対象となる年齢によって基準値が示されています。
要精検率が高すぎると、必要のない精密検査を受ける人が増え(偽陽性)、低すぎるとがんを見逃す可能性(偽陰性)が高くなるため、基準値に近い値であることが望ましいとされています。 例えば、胃がん、大腸がんや肺がん検診では、この数値が低い場合には、有病率の低い若年者の受診者が多くないか確認をしてください。

精検受診率と精検未把握率について

精密検査を受診し、結果を把握していれば「精検受診あり」となります。
次に、精検を受診しているか不明、または受診結果を確認できていない場合は「精検未把握」となります。
最後に精検を未受診であることを確認できた場合は「精検未受診」に分類されます。

精検受診率とは

精検受診率とは、要精検者が実際に適切な精密検査を受診して、結果を確認できた割合を示します。
この精検受診率ががん検診の事業評価にとって非常に重要であり、100%近くないとがん検診を実施した意味がなくなります。 精検結果を具体的に把握する方法については、こちらのページで紹介しています。

まだ精検を受けていないと分かった人に対しては、積極的に受診勧奨することが重要です。受診勧奨の方法については、以下のページを参照ください。

精検受診率が低いと、これ以降のプロセス指標であるがん発見率や陽性反応的中度の評価が適切にできなくなりますので、重要な指標です。

精検未把握率とは

精検受診したかどうかわからない、あるいは、精検結果がわからない人の割合を、精検未把握率と呼びます。
精検未把握率はできるだけ低いことが望ましく、ゼロに近いことが理想です。未把握が多いと、がん発見率や陽性反応的中率が適切に評価できません。

がん発見率とは

がん発見率とは、その検診において適正な頻度でがんが発見できているかを示す値です。
基本的に高いことが望ましいですが、基準値に比べ極端に高い値の場合は、受診者のがんの有病率が高い可能性があるので、原因を検討する必要があります。
例えば、がんの有病率が高い年代に偏っていないか?がん検診を初めて受ける人や長い期間検診を受けていなかった人(3年以上)が多いとがん発見率は高くなります。逆に低い値の場合は、精検受診率が低くないか、受診の把握漏れ、有病率の低い年代に偏っていないか等の確認が必要です。 子宮頸がんや乳がん検診など2年に1回が推奨されている検診を毎年受けている人が多い場合もがん発見率は低くなります。これらの原因がなく、低い値である場合が続いた時は、見逃し例が多くないか各検診機関に判定基準などを問い合わせてみることも考えます。

陽性反応的中度とは

陽性反応的中度とは、がん検診で「要精検」と判定された人のうち、実際にがんが発見された割合を示す指標で、効率よくがんが発見されたかの指標になります。また、この値が低いと偽陽性であった人が多いことになります。
基本的には、高いことが望ましいですが、極端に高い場合は、症状がある方ががん検診を受けている、がん検診を初回受診する者に偏っている、有病率の高い年代に偏っている、などをチェックしましょう。
低い場合は、がん発見率が低い、精検受診率が低い、有病率の低い年代に偏っている、などが考えられます。

プロセス指標まとめ

受診率 = (実際に受診した人数/がん検診受診対象者)× 100
要精検率 = (要精検者数/がん検診受診者数)× 100
精検受診率 = (精検受診者数/要精検者数)× 100
(精検未把握率) = (未把握者数/要精検者数)× 100
がん発見率 = (がんであった人数/がん検診受診者数)× 100
陽性反応的中度 = (がんであった人数/要精検者数)× 100

まとめ

このようにプロセス指標を算出して、基準値と比較して、がん検診によって適切にがんが発見されているか、不必要な精密検査が増えるなどの不利益が多くなっていないか等、検診全体の評価をしましょう。 ただし、対象人数が少ない場合は数値が大きく変動するため、数年間分をまとめて評価するなど工夫が必要な場合があります。精度管理を通じて、がん検診事業を振り返り、PDCAを回すことが大切です。がん検診受診率を高めるとともに、特に精検受診率が低い場合が最も重要なので、その対策について考えます。

ページトップへ